ゴールデンアーチ

ゴールデンアーチ(英: Golden Arches)は、世界的なファストフードチェーンであるマクドナルドのシンボルである。もともとは実際のアーチが店舗建築の一部として設計されていたが、1962年にそのアーチをモチーフとするロゴが採用され、当時は店舗の外観を抽象化したデザインとなっていた。現在の「M(マクドナルドの頭文字)」の形をしたゴールデンアーチのロゴは、1968年に導入されたものである。このロゴは、世界で最も認知度の高いロゴデザインの1つと広くみなされている。
歴史
[編集]1952年、兄弟のリチャード・マクドナルドとモーリス・マクドナルドは、カリフォルニア州サンバーナーディーノにある自分たちのハンバーガー店のために新しい建物が必要だと決意した。彼らは、その新しい建物に2つの目的を持たせようとしていた。より高い効率性、そして人目を引く外観である。少なくとも4人の建築家が面接を受け、最終的に1952年末、近隣のフォンタナで活動していた建築家のスタンリー・クラーク・メストンに依頼することになった。アーチは設計者選定の過程に大きく関わっていた。最初に面接した建築家は兄弟が望むアーチに反対し、2人目はそれを修正したいと提案した。3人目の建築家でロサンゼルスの著名人のダグラス・ホンノルドは、「自分たちがどうすべきかを決めたいなら、自分たちで設計すればいい」と言い放った[1]。

兄弟は自らの現場経験とともに、リチャードが描いた2つの半円アーチのラフスケッチをメストンに持ち込んだ。アーチという形状は、店舗をより目立たせる記憶に残るデザインになるとリチャードが直感したものであった。建物の正面に平行なアーチを設置する案を検討したのち、彼はスタンドの両端に半円アーチを描いた[1]。メストンはアシスタントのチャールズ・フィッシュとともに設計を行い、ネオン装飾が施された高さ約25フィートの黄色い金属製アーチ2本の計画段階ですでに「ゴールデンアーチ」と呼ばれていたを取り入れたデザインを完成させた。さらに道路沿いには「スピーディー」というシェフの帽子をかぶった丸いキャラクターが走る姿を描いた小さなアーチ型の看板が設けられ、こちらにもアニメーション仕様のネオンが施された。
建築史家のアラン・ヘスによると、「メストンとフィッシュは、リチャード・マクドナルドの単純な半円形スケッチを、緊張感と躍動性を備えた洗練された放物線に変えた」という[1]。同論文内でヘスは注釈として次のように記している。「誰が最初に放物線を提案したのかは定かではない。リチャード・マクドナルドと、最初のアーチを製作した看板業者ジョージ・デクスターは、放物線の発案者はデクスターで彼が設計に加えたと回想している。一方、図面作成を担当しメストンを補佐したチャールズ・フィッシュは、学生時代に格納庫の設計で構造放物線を使用した経験から自分が提案したと述べている。このような形態は当時、折板屋根などと並ぶ先進的な工学的設計として一般的であった」[1]。
メストンのデザインを採用した最初のフランチャイズ店舗は1953年5月にアリゾナ州フェニックスで開業した。その後のフランチャイズ店舗も同様にメストンの設計を使用することが義務づけられたが、彼は各地の条件や建築基準に応じて細部を調整していた[1]。

1962年、企業イメージを刷新する目的で新しいロゴの検討が始まった。フレッド・ターナーが最初に「V」形を提案したが、技術・デザイン部門の責任者ジム・シンドラーはその「V」を拡張して「M」にし、店舗を斜めから見たような形状に仕上げた。背景には赤い二等辺台形の「屋根」を配し、文字を配置した[2]。
1960年代にマクドナルドは実店舗から物理的なアーチをほとんど撤去したが[3]。ロゴ内には存続し、会社を象徴する普遍的なシンボルとして定着した。これは部分的に、心理学者のルイス・チェスキンの主張の影響である。チェスキンは、このアーチを「母マクドナルドの胸」と形容し、消費者の潜在意識に働きかけるフロイト的効果を持ち、マーケティング上の大きな資産になると論じた[4][5]
アラン・ヘスは、グーギー建築様式におけるアーチの起源と象徴性を次のようにまとめている[1]。
アーチは建築知識を持たない実業家のリチャード・マクドナルドによって考案された。その目的は純粋に実用的で、「遠くからでも目立つこと」だった。この意図がその大きさ・位置・単純な形を決定づけ、彼が親しんでいた過去のドライブイン建築の流れを踏襲するものとなった。マクドナルドにとって、このアーチは象徴的・歴史的意味を持たない恣意的な形だったが、やがてマクドナルドを象徴する存在になることを期待していた。アーチの配置は出入口のような伝統的用途を暗示するものではなく、構造的要素でもない。建築家は依頼者の決定したこの形式的概念を、1940年代から50年代の商業建築特有の機械的で力強いデザイン言語の中に落とし込み、結果として商業主義ゆえにこそ成功したデザインとアイコンを生み出したのである。
バリエーション
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マクドナルド・カナダが運営するすべての店舗では、ゴールデンアーチの中央にカエデの葉が挿入されたデザインのバリエーションが使用されている。これは、カナダの国家シンボルを企業ロゴに取り入れたものである[6]。

アリゾナ州セドナのマクドナルドでは、景観保護の観点から政府当局により黄色が岩山の景観と過度に対比して見えると判断されたため、アーチがターコイズ色に変更された[7]。
2019年時点で、ニュージャージー州マグノリア、フロリダ州ウィンターヘイブン、コロラド州モントローズ、およびアーカンソー州パインブラフの看板など、7か所のマクドナルドの店舗サインにはアーチが1本のみ描かれている[8]。
カリフォルニア州モントレーのデ・モンテ通り610番地にあるマクドナルドでは、黒いアーチが使用されている[9]。
アリゾナ州スコッツデールのNピマ通り18241番地にあるマクドナルドでも黒いアーチが使用されている[10][より良い情報源が必要]。
カリフォルニア州ロックリンのサンセット大通り2172番地にある店舗では、濃い赤色のアーチが使用されている[11][より良い情報源が必要]。
フランスのシャンゼリゼ通りにある店舗には白いアーチのネオンロゴが掲げられている。また、比較的最近[いつ?]建設されたベルギーのブルージュのマクドナルドにも白いアーチが採用されている[12]。
2017年、マクドナルドの中国法人は社名を「ゴールデンアーチ」に変更したが、店舗名は「マクドナルド」のままだった[13]、マクドナルドの広報担当者によると、これはマクドナルド・コーポレーションが中国部門の大部分を中信集団およびカーライル・キャピタルに売却したためであるという[14]。
2018年および2019年、マクドナルドは国際女性デーを祝うため、ソーシャルメディア上でロゴのアーチを逆さにし、「M」を「W」に変更した。また、カリフォルニア州リンウッドのパトリシア・ウィリアムズが運営するフランチャイズ店舗でも、看板のアーチを逆さにした[15][16]。この試みは一部で反発を招き、従業員への低賃金などを理由に「偽善的だ」と非難する声が上がったほか、ロゴの「M」は「マクドナルド」だけでなく「男性(men)」の頭文字にも見えるという指摘もあった[17]。
影響
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ゴールデンアーチという言葉は、しばしば換喩として用いられ、資本主義やグローバリゼーションを象徴するものとされている[18][19]。1996年に提唱された「ゴールデンアーチによる紛争予防理論」という表現の中で、「互いにマクドナルドを持つ2つの国が戦争をしたことはない」と一時期主張されたこともある。ゴールデンアーチは、世界的に展開する著名なアメリカ企業、すなわちマクドナルドを代表する象徴として用いられることが多く、同様の企業にはコカ・コーラやナイキなどがある。
また、重機船のVB-10,000に使用されている大型の空間トラス構造の形状と色がこのアーチに似ていることから、「ゴールデンアーチ」との愛称が付けられている[20][21][22]。
脚注
[編集]出典
[編集]- 1 2 3 4 5 6 Hess, Alan (1986-03). “The Origins of McDonald's Golden Arches”. Journal of the Society of Architectural Historians 45 (1): 60–67. doi:10.2307/990129. JSTOR 990129.
- ↑ Mark Hughes (2008年1月4日). “Logos that became legends: Icons from the world of advertising”. The Independent. 2009年10月3日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2008年4月27日閲覧.
- ↑ United States House Committee on Interstate and Foreign Commerce (1976-03-09). “Franchising Practices Reform Act”. Hearings Before the Subcommittee on Consumer Protection and Finance of the Committee on Interstate and Foreign Commerce. Washington, D.C.: U.S. Government Printing Office. p. 67
- ↑ “Brand iconography - the secret to creating lasting brands?”. Brand Strategy. (1999-02-20). オリジナルの2016-04-09時点におけるアーカイブ。.
- ↑ Schlosser, Eric (2001). Fast Food Nation. Boston: Houghton Mifflin. pp. 97-98. ISBN 0-395-97789-4. OCLC 45248356
- ↑ Barndt, Deborah (2008). Tangled Routes: Women, Work, and Globalization on the Tomato Trail. Rowman & Littlefield Publishing. p. 100. ISBN 9780742555570
- ↑ Mary Kinney (2016年7月15日). “Turquoise McDonald's arches ordered in Arizona town”. AOL. 2018年6月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月5日閲覧。
- ↑ “Only 7 original McDonald's golden arches still exist, and one is in N.J.”. NJ.com (2018年12月10日). 2021年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月23日閲覧。
- ↑ Lane Wallace (2010年2月13日). “One-of-a-kind design for new McDonald's in Monterey”. Monterey Herald. 2010年2月16日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2014年9月5日閲覧.
- ↑ “Google Maps link (Photos of building exterior in listing)”. 2024年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月12日閲覧。
- ↑ “Google Maps link (Photos of building exterior in listing)”. 2022年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月10日閲覧。
- ↑ “Paris has what is thought to be the only McDonald's with white arches in place of their traditional golden ones.”. 2014年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月5日閲覧。
- ↑ “'Golden Arches': McDonald's gets new China name following unit sale”. Reuter's (2017年10月26日). 2023年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月4日閲覧。
- ↑ Chen, Na (2017年10月26日). “McDonald's Changes Its China Company Name to 'Golden Arches'”. Six Tone. 2023年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月4日閲覧。
- ↑ Kate Taylor (2019年3月9日). “McDonald's is flipping its iconic arches upside down again for International Women's Day”. Business Insider. 2019年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月2日閲覧。
- ↑ Abigail Hess (2018年3月7日). “McDonald's is turning its golden arches upside down to make a statement”. CNBC. 2019年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月2日閲覧。
- ↑ Natasha Bach (2018年3月7日). “Why McDonald's International Women's Day Celebration Isn't Going as Planned”. Fortune. 2019年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月2日閲覧。
- ↑ “Planet Mac”. The Guardian (イギリス英語). 2001年4月6日. ISSN 0261-3077. 2023年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2023年7月2日閲覧.
- ↑ Glancey, Jonathan. “The strange story of the world's most famous logo” (英語). www.bbc.com. 2023年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月2日閲覧。
- ↑ “Golden arches causing a stir in the Gulf”. The Lafourche Gazette. 2013年10月4日. 2016年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2016年8月1日閲覧.
If you were travelling along Louisiana's coast last week, you may have seen giant golden arches floating in the Gulf of Mexico. No, McDonalds did not open an offshore location. The arches are actually those of the VB 10,000 – a massive, floating piece of equipment that is used for salvaging and decommissioning oil platforms.
- ↑ Lammey, Mark (2020年2月11日). “Versabar gears up for another crack at North Sea market”. Energy Voice. 2022年8月11日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2023年1月25日閲覧.
[Versabar] has decommissioned more than 200 platforms in the Gulf of Mexico (GoM) using its VB-4000 vessel, aka Bottom Feeder, VB-10000, nicknamed Golden Arches, and third party crafts.
- ↑ Miller, Kimberly (2021年11月10日). “Mystery solved: Beachgoers see odd giant structure float by Palm Beach County's coast”. The Palm Beach Post. 2023年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2023年1月25日閲覧.
It appeared on the horizon last week like a massive floating ERECTOR Set, or golden arches for the world's largest McDonald's or a seaworthy amusement park ride.
関連項目
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